◢◤その人のために用意したレッスンだったのに◢◤

無料体験レッスンの日。

講師は朝からソワソワしながら準備をしました。

「今日はどんな方が来てくれるんだろう」
「英語が苦手なら、少しでも安心してもらいたい」
「この一歩が、その人の人生の扉を開くかもしれない」

そんな思いで、
その人のレベルに合わせて教材を作り直し、
声のトーン、出す問題、話しかけ方まで調整して、
Zoomの前に座ります。

職員もサポートのため控えています。
二人とも、画面の向こうのまだ見ぬ誰かのために。

けれど、
時間になっても、入室はありません。
３分待っても５分、１０分・・・

「迷ってしまったのかな」
「困っているのかもしれない」

そう思って電話をかけると、返ってくるのは怒気を含んだ声。

「メール来てない！」 「そっちのミスでしょ！」

こちらの説明は遮られ、
まるで悪者のように責められ続けます。

胸の奥が、ふっと沈みます。

だって、こちらは
あなたのために本気で準備した。
ただ、それだけなのに。

PCメールに６回、ショートメールに
「確認できたらご連絡ください」
と丁寧に2回送りましたが、返事はありません。

それでも諦めず、
もう一度だけ体験ルームを立ち上げました。

そして、、、ナント！

その人は普通に入室してきたのです。

IDもパスワードも読んでいる。
メールも届いている。確認もしている。
すべて分かっている。

けれど、
「メールが来てない」と言い張ったあの瞬間の怒りは、
私たちの胸に、静かに傷をつけていました。

無料なら何をしてもいい。
講師の努力も、職員の時間も、体験レッスンは
「コストゼロのサービス」だと思われてしまう。

けれど本当は、無料体験にも、
たくさんの「人の想い」と「時間」が詰まっているのです。

その人のために作った教材。
その人のために確保した時間。
その人のために調整したレベル。
その人のために準備した笑顔。

すべてが、宙に消えていく。

そんな日が続いたとき、
講師がぽつりとつぶやきました。

「本当に学びたい、英検に合格したい人だけに
　心を込めたいですね、、、」

その言葉に、胸がきゅっとなりました。
悲しいけれど、正しい言葉です。

だからこそ私は、伝えたい。

「無料」を利用する前に、
その向こう側にいる　「人」を
一度だけ思い浮かべてください。

あなたのために準備した誰かが、
心から学びたい誰かのために、
画面の向こうで静かに待っています。

最初の一歩を、
どうか大切にしてくれるあなたでありますように！

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