★☆悲惨なゴルフデビュー☆★
私のゴルフデビューは、笑いと恥ずかしさの嵐だった。
いやぁ、嵐どころか台風だった!
ある日、友人から「今度ゴルフ行こうよ!」と軽いノリで誘われた。
ゴルフ?あの紳士のスポーツ?当時の私はテレビで見たこともないし、ルールだって知らない。
もちろんスクールにも通った訳でないのに
能天気な私はふたつ返事でOKを出してしまった。
この時点で、私の人生に新たなトラウマが追加されるとは、夢にも思わなかった。
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★緑の罠、初めてのゴルフ場
当日、ゴルフ場に足を踏み入れると、そこには広大な緑の絨毯が広がっていた。
同行者たちはみんなゴルフウェアに身を包み、プロっぽい雰囲気を醸し出している。
一方の私は、スポーツ用品店で「初心者用ハーフセット」というものを前日に買い揃え
なんとなくそれっぽい格好で現場に突撃した。
「まあ、ゴルフなんて棒を振り回して球を打つだけでしょ?」
そんな軽い気持ちでスタートホールに立った。そして、運命の瞬間が訪れる。
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★パターとの悲劇的な出会い
最初はドライバーだ。
緊張のせいか膝はカクカク~、心臓はパクパク~。
力強く振り抜いて遠くに飛ばせばいいんでしょう。
1回目みごとな空振り、みんな目をつぶってくれた。
2回目、私のスイングは空振りはしなかったけど大きく地面をえぐってしまった。
それでも「初心者だし、こんなもんでしょ」と周りは笑ってくれた。
問題は後半にやってきた。
グリーンに到着し、いよいよパターの出番だ。私はバッグからパターを取り出し、
ドライバーと同じように構えた。そして、全身の力を込めてフルスイング!
「バッコォォォン!」これが見事に当たったのだ。が、
ホールから数メートルも離れた向こう側にストンと落ちた。
その瞬間、同行者たちは爆笑の渦に飲み込まれた。
Aさんは膝をついて笑い転げ、Bさんは『いや、これは伝説だぞ~』と
今にも携帯を取り出しそうな勢いだった。
私は何が起きたのか分からず、ポカンと立ち尽くす。
どうやら、パターというのはドライバーの親戚ではなく、繊細に転がすためのクラブらしい。
知らなかったよ、誰も教えてくれなかったんだ。
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★トラウマとハーフセットの行方
その後のラウンドは地獄だった。
同行者たちは私を見るたびにニヤニヤし、
時折「次はパターでティーショットしてみる?」なんて冗談を飛ばしてくる。
私は笑顔で返すふりをしながら、心の中で何度も叫んだ。
「もう二度とゴルフなんてやるもんか!」
ラウンドが終わった後、家に帰ると購入したばかりのハーフセットを眺めた。
これをどうするか。使い続ける勇気はない。かといって、捨てるのももったいない。
結局、数日後にネットオークションに出品し、ささやかな小銭を手にした。
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★ゴルフの楽しさとは?
今でもゴルフの楽しさは分からない。
あの緑の中を歩き回り、ボールを追いかけることが、なぜ人々を夢中にさせるのか。
私にはただの苦行にしか思えなかった。
ただひたすらに「恥ずかしさ」と「疲労感」を与えるスポーツだった。
ただ、ひとつだけ分かったことがある。
ゴルフは、ただ棒を振り回せばいいというものではない。
そこにはルールがあり、技術があり、そして パターはドライバーの親戚ではないってこと
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★封印されたゴルフ
それ以来、ゴルフの誘いが来ても全力で断るようになった。
ゴルフ番組もぜったいに見ないし、ゴルフ用品店の前を通るときは目を逸らす。
私の中でゴルフは「封印されたスポーツ」として、心の奥底に仕舞い込んでいる。
でも、たまに思うのだ。あの時、もう少しちゃんと準備していたら、
ゴルフの楽しさに気づけたのだろうか、と。
いや、やっぱり無理だ。
パターを振り回して笑われた記憶は、そう簡単には消えるものではない。